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85.
あれから、不審に思ったオーナーが様子を見に来て、黙って鏡を差し出すのをぼんやり眺めた。
そりゃあもう、酷い顔に決まってる。
再び1人になってすぐ。裏口の扉が開いた。
俺を見て少し驚いたような顔をする、翔。
「店、戻らないんですか?」
「………随分遅かったね」
質問には答えず、静かに立ち上がった。スッと目を細めたこの男が、何を考えているのか分からない。
「…泣いてましたよ」
誰が、なんて言われなくても分かる。
傷付けたのは俺だから。
目の前にかざされたスマホ。画面を見なければ良かったと、後悔しても遅い。
『服、汚してすみませんでした…。今度何かの形でお詫びさせてください。それと…俺で良ければ、よろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。』
事情があるとはいえ、知り合ったその日に送られてきたメール。
……俺の時とは、違う。
気になる部分はたくさんあるのに、何も聞く気になれなくて。
翔の横をすり抜け、そのまま外へ出た。
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