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87.
何日か経って、翔さんと会った。
あの日の別れ際に、これからも仲良くしてほしいと念押しされて。嫌ではなかったし、お礼もしたかったから。
並んで歩く時、何度か頭を撫でられた。
優しすぎる手つきに、どこか気分が落ち着かない。
違和感の正体を考えて、考えて―――思い当たる。
ルイさん。
彼の撫で方と、違う。
あまり回数は多くなかったけれど、俺の頭に触れる時。力の加減が分からないのか、いつもすぐ離れて行ってしまって。
少し不器用で、実はあまり慣れていないのかもしれない。
(なんて、そんな訳ないか…あの見た目だし)
ミウちゃんを撫でる姿が脳裏に浮かんで、懐かしく思う。少しの間だけでも、友達になれて嬉しかった。俺には無い要素を全て兼ね備えた、素敵な人。
いい加減、諦めなければと思うのに。
まだ―――近くに居たかったと心が訴える。
頭と気持ちがバラバラで、どうしたら良いのか分からない。もう、考えることに疲れてしまって。
暗い部屋の隅で、膝を抱えた。
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