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「ほら、そんな所に立ってんなよ」 一室に置かれた大きいベッドの端を叩くハルさんに逆らえず、そろりと近寄った。 「あ、の…本当に……」 まさかこういうことになるとは、夢にも思っていなくて。彼は悪ふざけでここまでする人じゃないだろうから、きっと俺のためにしてくれている。 「…ん?俺じゃ不満?」 それは痛いほど分かっている、けれど。不満、以前の問題で。曖昧な反応の俺に焦れたのか、急に引っ張られて倒れ込んでしまった。 「どっちが良い?抱くか、抱かれるか」 ダイレクトに聞かれて、ひくりと喉が震えた。 首筋に僅かな痛みが走って、痕が付いたことを悟る。 ハルさんに、こんなことをさせてしまった。 何も言えない自分も、迷惑をかけている自分も。 俺が不甲斐ないせいで。 「…っ……芹生、くん」 覗き込んでくる双眸が揺れたのを、はっきり見ることはできなかった。 「ごめ、なさ……い…」 「謝るなって。嫌だったろ?」 抱き起こしてくれた彼は、どこまでも優しい。そのことが、余計に涙を溢れさせて。 見つめたまま、ゆっくりと頷いた。 「…俺じゃなくて、ルイだったら?」 予想外の問いに、見開いた目からぽろりと涙が落ちたのを感じる。全く考えなかったといえば、嘘になるけれど。一瞬…ルイさんを想像してしまったのも事実で。 「逃げずにちゃんと話しておいで。きっと受け止めてくれるから」 優しく諭されて、居ても立ってもいられなかった。おざなりな挨拶を申し訳なく思いつつ、慌てて部屋を飛び出す。 早く、会いたい。 伝えたいことも、聞きたいことも、たくさんある。

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