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102.
「あーあ、こんな所で言うつもりじゃなかったんだけどな…」
くしゃりと髪を掻いて笑うルイさんの意外な一面を見られた気がする。
「ふふ、ロマンチストなんですね」
「んー…なんとなく、こういう雰囲気が良いなぁとは考えてたから。自分から告白したことないし、あくまで想像だけど」
さらりと嫌味を言ってのける彼に、感じたままを伝えると。驚いたように目を見開いた後、頭を撫で回された。
「な、何ですか急に…!」
「いや?少し変わったね、楓くん」
言われてみれば。前は確かに、遠慮しすぎる節があったかもしれない。
「俺は今の方が好きだよ」
もしかして、これからずっとこんな感じになるのだろうか。だとしたら油断も隙もあったもんじゃない…。それより心臓が音を上げるのが先か。
「…退院したら、海に行こう」
「海…に?」
「うん。海だけじゃなくて、他にも色々。たくさん一緒に出掛けて…それで、俺のことも好きになってください」
もちろんゆっくりで良いけど、なんて笑う彼の本気を出させてしまうかもしれない。ほぼ当たるであろうその予感に、そっとため息をついた。
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