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103.
今までのことをかいつまんで話すと、心底安心したような表情を見せるリンさん。荒れている俺を相手にしていた彼にも迷惑を掛けてしまった。
「取りあえず一件落着ってことでいいのかしら?」
「…と、思う」
「に、しても…翔くん?気になるわねぇ…」
顎に手を当てて思案する横顔は真剣そのもので。それについては俺も同意見だが、実害がない以上どうしようも出来ない。
「まあ、何かあれば対処する」
「そうね。そのあたりは上の人に任せましょうか」
スプレーを上下に振りながら、再び顔を覗き込んでくるリンさん。
「…で、エースの子はどうしたの?」
彼女はあれから店に来ていない。こうなることは充分に想像出来たけれど、あの時はそれよりも事実を確かめるのに必死だった。
黙った俺の態度で察したのか、ため息をひとつ。
売上としては確かに痛い。
「次のエース争いでみんな張り切るだろうし、俺も頑張らないと」
ぽんぽん、と肩に手を置かれて。
今日も戦場へ赴く準備が出来たようだ。
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