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105.
駅に向かう道すがら、忘れ物がないかとひたすら考える。
澄み切った空に思わず笑みが零れた。
さほど大きくない駅なのに、利用者は多い方だといつも感じる。休日の人混みに目を凝らして、ルイさんの姿を探すが…
(あれ、いない…?)
首をひねって、時間を確認しようとスマホを取り出す。あんなに目立つ人が見当たらないなんて、そんな馬鹿な。
「…えっ、あ…もしもし?」
画面が突然明るくなって、着信を告げる振動。慌てて応答した。
『楓くん、今どこにいる?』
「駅に着いたところです、ロータリーの端なんですけど…」
言いながら目の前に視線を走らせていると、至近距離で聞こえてきた声。
「……ふふ、おはよう」
心臓が飛び出なくて良かったと、本気で思う。取り落としそうになったスマホが手のひらで跳ねて、思わず両手で掴む。恨みを込めて振り返ると。
目を細めて笑う、ルイさんが立っていた。
「ごめんね。車が多かったから、横の路地に停めたって言おうとしたんだけど…」
口を開く前に、くしゃりと髪を撫でられ。
「きょろきょろしてるのが、何ていうか…かわ……面白いなぁ、と思って」
悪びれる様子もなく言われてしまうと、すんなり許せてしまうから不思議だ。それでも少し拗ねたまま頷く。
「…じゃあ、行こうか」
頭の上に乗せていた薄い色のサングラスをずらす姿に見入っていると、またも荷物を奪われて。相変わらず自然な仕草だな、なんて考えながら後を追った。
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