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106.
「はい、どうぞ」
ドアを開けてもらって、恐る恐る中へ乗り込む。なんたって左ハンドルの外車だ。汚してしまってはと思うと気が気でない。
「ルイさん、免許取ってから長いんですか?」
「確か19の時に取ったかなぁ…だからもう7年?」
(…て、ことは今26歳か……)
頭の中で計算して頷く。赤信号で止まった彼は、くすりと笑ってこう続けた。
「人を乗せることも多いんだけど、何故かハルは乗りたがらなくてね」
「車酔いしやすいとか…?」
首を捻ると、横で肩を竦める気配が。カーステレオから流れる音楽に耳を傾けて、ふと思い出す。
「…ハルさんといえば、この前電話が来て…」
「電話?」
「はい。何ていうかこう、落ち込んでるみたいで…俺どうしたら良いか分からなかったんです」
目を伏せると、頭に手のひらが乗る。緩く撫でられて、久しぶりの感覚に口元を緩めた。
「あいつも落ち込むことくらいあるよ、大丈夫。良い大人だからきちんと自分で考えられるさ…どうしようもなくなったら、きっと相談して来るだろうし」
黙って頷くと離れる手。少し名残惜しく思いながら顔を上げた。
「…さて、シートベルトはちゃんとしてる?」
問われて確認しながら、やけに楽しそうな声音が気になってちらりと様子を窺う。
「俺の大好きな高速道路だから…ね」
(……これは、まさか)
予想し得る事態にひくりと頬を引き攣らせる俺をよそに、無情にも車はゲートをくぐって行った。
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