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107.
途中のサービスエリアで休憩中、自分がぐったりしているのをひしひしと感じる。
「今日は楓くん乗せてるし、いつもよりゆっくり目に来たんだけど…早く着きそうだなぁ」
道が空いてて良かった、と呑気に笑う彼はとんでもないスピード狂でした。
(もしかして、ハルさんが乗りたがらない理由ってこれなんじゃ……)
今度会ったら聞いてみよう。
項垂れる俺にペットボトルを差し出して、目を細めるルイさん。
「これでもゴールド免許だから、安心して」
穏やかそうな人なのに……意外な一面を見た気がする。
トイレから出ると、前にも見たような光景が。
「1人なんですかぁ~?」
「どこ行くのか知りたーい!」
(デジャヴ……?)
どこに行っても囲まれる性質 なのだろうか。まるで芸能人だと苦笑しつつ、車に戻る。
しばらくして隣に乗り込んだ彼は疲弊している様子で。
「……疲れた」
「大丈夫でしたか?」
ペットボトルを渡すと、じと目で睨まれ。それでも受け取る姿は何だか可愛らしい。
「…楓くん、俺のこと置いて戻ったよね」
「え…だってあんなの慣れっこでしょう?」
首を傾げると、一瞬だけ見開かれた瞳。瞬いたそれがスッと逸らされて。
「……店とプライベートじゃ、違うよ」
置かれた手のひらは、さっきよりも重かった。
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