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109.
こんなに笑ったのは久しぶりな気がする。
「…やっぱり一緒に来て良かった」
日差しも水面も、眩しいけれど。一番輝いているのは楓くんだ、なんて。目を細めて見つめる。
「え?何か言いました?」
聞き取ろうと近づいて来る彼が、バランスを崩して後ろに倒れかける。咄嗟に伸ばした手で支えられたのは良かったけれど――
「…っ、あぶ…な…」
片腕で抱き込むような体勢になってしまったのに気付いたのは、だいぶ経ってからだった。
間近にある顔がくしゃりと歪む。拒絶と受容の狭間で揺れる瞳を見たくなくて、目を伏せた。
彼は俺の気持ちを知っているから。応えたいのに躊躇う逡巡であれば、と。自分に都合の良いように願う。
「……子供は、そんな顔しないか」
そっと合わせた額は少し震えていた。
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