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111.
相変わらず楓くんの手料理は絶品の一言に尽きる。俺の味覚を把握したようなそれに舌鼓を打ちながら海を眺めた。
「卵焼きの甘さ、大丈夫ですか?」
「うん、俺はこれくらいが好きだな」
「良かった…細田はしょっぱい方が好きだからいつも揉めるんです」
思い出したのか、くすりと笑う彼を横目で見やる。
「…細田くんにも料理作るんだ?」
「昔は何回か…あ、でも今はおかずを交換するだけですよ」
……何となく、面白くない。
卵焼きを摘んで口元に持って行けば、きょとんとした顔で見上げる楓くん。
「…細田くんにも、流石に食べさせてはもらわないでしょ」
明らかに拗ねていますと言わんばかりの声音に吹き出してしまった彼は、おとなしく口を開けてくれた。
「俺の中で、ルイさんのイメージがどんどん変わってます」
「え…良い方に?それとも…」
「…ふふ、秘密です」
満足そうに卵焼きを咀嚼する横顔は、やっぱり綺麗で。このままずっと隣に居たいと思う。
「に、しても。普通は俺がする側なんじゃ…」
ぽつりと落とした言葉を拾って、顔を覗き込む。
「あれ、してくれるんだ?」
自らの墓穴を掘ったことに気付いた表情が見られるまで、あと少し。
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