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重なる手のひらが予想よりも熱くて、僅かに震えた。 軽く目を伏せた彼が深呼吸するのを見守る。何度か口を開きかけては閉じ、逡巡している様子。 それでも辛抱強く待っていると。 「………みつい、さん」 どくり、と心臓が跳ねた。窺うようにこちらを見つめる瞳はどこまでも澄んでいて。 「結構、照れますね…これ」 恥ずかしそうに笑って、両手で剥がした俺の手のひらを包み直す。はにかんだ頬に差す朱は、きっと夕陽のせいだけじゃない。 (天使か………) 表情筋が頑張ってくれている内に、急いで心を鎮める。穏やかな波を見て必死に邪念を振り払おうとするも、触れている手のひらがどうしても気になってしまう。 「三井さん、」 「…うん?」 手元に落ちていた視線が、ぱっと上げられる。 「ちょっと慣れておこうと思って…練習です」 こんな天使を目の前にして我慢できるわけがない。反対の手で頭を撫でた。そりゃもう気が済むまで長々と。 あのままだと何をしでかすか分からない、なんて。そんな自分に苦笑しつつ。 そろそろ戻ろうと彼を促し、車へ向かう途中。 「今度は俺の行きつけの店、連れて行ってあげるよ」 「本当ですか?楽しみにしてますね」 "次の約束"で口元を綻ばせる姿に、心が温まるのを感じる。彼と居るだけで、俺はこんなにも幸せだ。 帰りの車はできるだけゆっくり走らせようと心に決めて、エンジンをかけた。

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