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「乾杯!」 目の前で美味しそうにビールグラスを傾けるこの人は、本当に男性なのだろうか。歌舞伎の男性が演じる女形のような、豪快さと繊細さを兼ね備えた美しい人。 「自己紹介が遅れました、アタシはリン。ルイのヘアメイク担当してるのよ~」 上機嫌でわしゃわしゃと三井さんの頭を撫で回す。される彼もいつものことなのか、僅かに目を細めただけだった。 「あ…俺は、芹生楓です。よろしくお願いします」 軽く頭を下げてサワーに口をつける。ちらちら見ていたのがバレたのか、緩く笑ったリンさんと目が合ってしまった。 「うーん、まだ信じられないって顔してるわねぇ」 「仕方ないよ、俺も初めは疑ってたし」 枝豆を摘みながら三井さんがぼそりと呟く。当時を思い出したのか楽しそうに笑ったリンさんは。 「胸触らせたら一発で信じたけどね」 何とも言えない発言を落として行った。頬が引き攣るのを感じて思わず浮かべた苦笑。 「あ、なんなら脱ぐ?下はまだ工事してないから」 全力で首を振って、ふと疑問に思う。胸を触らせたなら、ますます女性だと考えそうなものだけれど…。少し迷って、恐る恐る口にする。返ってきた答えは――― 「ああ、本物とシリコンの違い。この子クラスになると分かっちゃうみたいなのよね~」 なんせ抱いてきた桁が違うから、と。 目の前の2人を直視できなくて、視線を手元に落とした。

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