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肩の傷について聞いた途端、今までと一変して余裕な態度に変わるルイさん。面白がっているようなそれを不思議に思う。
「あー…あれを付けた犯人はね、ミウだよ」
「ミウちゃん…?」
首を傾げる俺に頷いた彼は蛸の唐揚げを摘み、こう続けた。
「ちょうど人間の赤ちゃんにしてやるように抱っこして背中を撫でると、ご機嫌になってね」
それはウチの犬にも良くする事だ。しかし、それと傷と、何の関係が…?
「落とされまいとして爪を立てるんだ、肩の後ろあたりに」
風呂上がりにしたのがまずかったなぁ、と。言われて一瞬で理解した。つまりあれは、ミウちゃんのささやかな抵抗だったのか。
知ってしまえばなんてことはない理由に拍子抜けして、がくりと肩を落とす。
「…でも、嘘は言ってないから」
悪戯が成功した子供のように笑う、その表情。確かに主語がないだけで、嘘にはならない。勝手に深読みしてしまったのは俺だ。
「それならそうと言ってくださいよ!俺、てっきり女の人だと思って―――…」
悔しさから思わず口をついて出た言葉に驚く。
今、何を続けようとしていた?
突如として黙り込んだ俺を前にして2人が顔を見合わせるのを横目に、グラスのアルコールを流し込んだ。
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