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121.
「今日は本当にありがとうございました」
「うん、楽しんでくれたみたいで良かったよ」
帰りの車内。もうすっかり日も暮れたせいか、灯るのはカーナビの明かりだけ。
「…あの、さ」
「はい?」
前を向いたまま、口火を切った。
一緒に居た時間の長さじゃない、出掛けた回数でもない。それは分かっているけれど。
少しは進んでいるのだろうか、と。確かめたくなって。
「さっきの、土産屋で…何か思った?」
「……いえ、特には」
答える声と赤信号が重なって、ブレーキを踏んだ。隣を窺うも変わった様子は見受けられず。
(まだまだ、か…)
ぽん、と頭を撫でて前に向き直った。
「すみません、駅まで送ってもらって…」
「良いから。気にしないで」
それじゃあ、と扉を開けようとした彼の腕を掴んで止める。
「はい、これ。三井さんからのプレゼントです」
「えっ…!」
視線で促せば恐る恐る袋の中を覗き込んで。ぱっと顔を上げたその表情は、嬉しさ半分と戸惑い半分。
「可愛い、ですけど…申し訳なくて貰えませんよ…」
そう言うと思って2つ買っておいた。袋から取り出したのはイルカとカピバラのぬいぐるみ。
「…じゃあ、どっちかだけ持って帰る?」
両手に乗せると分かりやすく泳ぐ視線。しばらくイルカとカピバラを往復した後、手を伸ばして2つとも抱える。
「……そんな可哀想なこと出来ないです」
睨む相貌も、もふもふを抱えたままだと何の威力もない。思わず吹き出してしまって、更に怒られるのは数秒後の話。
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