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「今日は本当にありがとうございました」 「うん、楽しんでくれたみたいで良かったよ」 帰りの車内。もうすっかり日も暮れたせいか、灯るのはカーナビの明かりだけ。 「…あの、さ」 「はい?」 前を向いたまま、口火を切った。 一緒に居た時間の長さじゃない、出掛けた回数でもない。それは分かっているけれど。 少しは進んでいるのだろうか、と。確かめたくなって。 「さっきの、土産屋で…何か思った?」 「……いえ、特には」 答える声と赤信号が重なって、ブレーキを踏んだ。隣を窺うも変わった様子は見受けられず。 (まだまだ、か…) ぽん、と頭を撫でて前に向き直った。 「すみません、駅まで送ってもらって…」 「良いから。気にしないで」 それじゃあ、と扉を開けようとした彼の腕を掴んで止める。 「はい、これ。三井さんからのプレゼントです」 「えっ…!」 視線で促せば恐る恐る袋の中を覗き込んで。ぱっと顔を上げたその表情は、嬉しさ半分と戸惑い半分。 「可愛い、ですけど…申し訳なくて貰えませんよ…」 そう言うと思って2つ買っておいた。袋から取り出したのはイルカとカピバラのぬいぐるみ。 「…じゃあ、どっちかだけ持って帰る?」 両手に乗せると分かりやすく泳ぐ視線。しばらくイルカとカピバラを往復した後、手を伸ばして2つとも抱える。 「……そんな可哀想なこと出来ないです」 睨む相貌も、もふもふを抱えたままだと何の威力もない。思わず吹き出してしまって、更に怒られるのは数秒後の話。

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