122 / 330
122.
翌朝。歯を磨きながらふと思いついた。
家を出て、電車に乗りながらメール画面を開く。
『おはようございます。
昨日は本当に楽しかったです。
お土産もありがとうございました。
イルカにはルイさん、カピバラには三井さんって名前を付けたんですけど…理由は言わないでおきますね。
今日もお仕事頑張ってください。』
昼休みになって。食堂で細田と話をしていると、スマホが震えた。
『こちらこそ。水族館は久しぶりだったけど、楓くんと一緒だったから楽しかったです。
本当はクラゲのぬいぐるみをあげようと思ったんだけど、やめておいて正解だったかな…
残りの授業もちゃんと受けるんだよ。』
理由を伏せた俺へのお返しか、こちらも答えが語られない真ん中の文章。
クラゲコーナーで突然笑い出した姿を思い出す。思い当たる可能性は―――…
「なあ細田。俺ってクラゲっぽい?」
「はぁ?」
ラーメンをすする目の前の彼に問いかければ、不思議そうにしながらもこくりと頷く。
「じゃあ、み……ルイさんは、イルカとカピバラどっちのイメージ?」
「そんなん間違いなくイルカだろ」
こしょうを振り入れながら断言する姿に笑って目を伏せた。
友達になる前は、賢くて綺麗で仕事のできるスタイリッシュな印象だった三井さん。もちろん今もそれは健在だけれど。
ちょっとしたことで拗ねたり、予想外の出来事に慌てたり。実はのんびりするのが好きだと知って。
貰い受けた2匹のぬいぐるみに、迷わずそれぞれの名前を付けた。
ともだちにシェアしよう!