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123.
サークルが遅くなってしまって、外はもうすっかり真っ暗だ。
後輩と別れて駅へと急ぐ。学生専用の通路は細く、背の高い茂みとフェンスに囲まれて夜は不気味だといつも思っている。
もうすぐ街灯が密集する明るい場所に辿り着く―――…
そう、ほっと息をついた瞬間。
ガサリ、と後ろの茂みが動いた。反射的に振り返ると、何人かが飛び出してくるのが見えて。逃げる間もなく羽交い締めにされてしまった。押さえつけられた手足、口元に当てられた布。
しばらく抵抗するも、意識が遠くなる。
最後に聞いたのは複数の笑い声だった。
やけに反響する話し声が耳に入って、徐々に意識が覚醒する。
ズキズキと痛む頭で考えようとするが、それよりも早く目の前の状況が飛び込んできた。
(え……あの、人…)
「気が付いたみたいですよ、ミカさん」
後ろ手に縛られた状態で床に転がされているのだろう、傍にいる男も彼女もみんな高い位置に居て。
ヒールの音をさせながら近づいてきた彼女―――ミカさん、は。俺の口に貼られたガムテープを一気に剥がした。
「………っ!」
「やっとお目覚め?待ちくたびれたんだけど」
それを丸めて捨てる床はコンクリート。向こう側に大きいシャッターが見える。どうやら廃ビルのようだ。
彼女に視線を戻すと突然顎を掴まれて。
「い、っ…!」
やたらと長く伸ばした装飾付きの爪が食い込んあで、僅かに眉を寄せる。そのまま左右に振った後、彼女は顔を歪めながら離れて行った。
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