124 / 330

124.

「なん、で……こんな…」 震える声で問いかけると、鼻を鳴らすミカさん。 「気に入らないからに決まってるでしょ。ルイは友達とかほざいてたけど、分かりやすくあーんな目で見てたくせに…腹立つ!」 尖った爪先がみぞおちを抉って、一瞬息が詰まる。滲んだ涙を瞬きで落とし、目の前の彼女を睨みつけた。 「…ムカつく目で見てんじゃないわよ。ルイを奪っておいて何様のつもり?」 唾を吐き捨てて少し離れた椅子に座ると、左右に控える男を見て顎をしゃくった。 「死ぬよりつらぁーい責め苦を味あわせてあげる。覚悟しなさい」 そこからはもう、ひたすら暴力の嵐だった。目を瞑って、一刻も早く終わるようにとただ願うだけ。そんな中、聞こえてきた言葉に心臓を鷲掴みにされた。 「アンタ達、顔は傷付けるんじゃないよ!最後に可愛がってやるんだから」 蛍光灯にキラリと反射するナイフを見て、流石に命の危険を感じた。 意識を飛ばそうとしても、それに気づいた男達に冷水を浴びせられて。永遠にも感じる地獄のような時間。 「キレーな造りが余計にイラつく…その顔でルイを落としたの?ねえ、そうなんでしょ?」 「…ふざ、けんな…っ…!」 まただ。こんな目に遭うなら顔なんていらない。息も絶え絶えに叫ぶと、喉の奥から鉄がせり上がってくる。勢いに任せて濡れたコンクリートに血を吐いた。 「チッ…二度と見られないような顔にしてあげる。恨むんなら親にしなさい」 ナイフが右から左へ動くのを認めた、数秒後。頬にピリッとした痛み。楽しそうに笑った彼女をただ凝視するしかなくて、無力感に唇を噛んだ。 その時―――…

ともだちにシェアしよう!