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126.
「ルイ、聞いて!これは違うの―――ッ」
慌てた様子で捲し立てる女の頬を、叩いた。渾身を込めた力を受け、尻餅をつく様子を無感動に眺めて。
髪を掴んで引きずり立たせようとした瞬間、
「……ルイ、さん…っ」
掠れたその声に、思わず振り返る。ハルに支えられて体を起こした楓くんが、こちらを見つめていた。
「それ以上、は…ダメです……」
ゆるゆると首を振った彼は大きく息をついて俯く。気遣わしげに覗くハルが後を引き取り、続けた言葉は。
「同じ外道に成り下がってほしくないんだろ、きっと」
言われてようやく手を離した。指に絡む長い髪に顔をしかめて振り払う。
「……次は無い」
この女のために声を出すのすら億劫で。短く吐き捨てて背を向けた。
「あー…ちなみに。こっちは証拠あるから、今後また動くなら然るべき場所に提出させてもらうつもり。そうなるとマズいんじゃねえの?…お父様の立場、とか」
「卑怯なヤツ…」
「…はっ、どっちが」
ひらりとスマホを掲げるハルを苦々しげに睨んだ彼女は、深いため息をついた。
「別にもう何もしやしないわよ…興醒めもいいとこ。サツに提出されちゃこっちも困るし。今後、手は出さないって誓ってもいいわ。ただ1つ、言っておくけど…」
男達を従えてシャッターへと進む足が、止まる。
「…他にも敵は居るってこと、お忘れなきように」
振り返りながらいっそ嫌味なほど毒々しく笑って見せるその姿は、さながら女郎蜘蛛のようだった。
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