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薬を飲んでひと息ついた彼に近寄る。何から言えば良いのか、ぐるぐると頭の中で回る言葉たち。 「……本当に、ごめん」 結局それしか出てこなくて、深々と頭を下げた。恐る恐る視線を戻すと、苦笑しながら目を伏せる楓くん。 「起きてしまったことは、仕方ないですから」 そう言われてしまうと、ただ謝ることしかできない。軽く嘆息した彼が口を開く気配がして、押し黙った。 「…助けに来てくれて、ありがとうございました」 お礼を言われたはずなのに、何故か素直に喜べなくて。普段よりも幾分か平坦な声音。あんなことがあった後だから、もちろんショックを受けているのは分かっている。 それでも、この奇妙な違和感は何だろう。 さっきよりも赤みが戻ってきた頬、僅かに上がった口角。 けれど、その双眸は不自然なほどに凪いでいた。 「…楓、くん―――」 「はーいお待たせしましたー!」 陽気な声を纏いながら再び部屋に戻ってきた2人を見て、瞬きしたその後。 もう、あの静けさを湛えた瞳が現れることはなかった。

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