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134.
それから数日後。例の彼からメッセージが送られてきて。
あまりのタイミングの良さに、一度は忘れかけていた疑問が再び首をもたげる。
久しぶりにまた会って話したい、と。
なんてことの無いその文章にどう返事をしようか迷った。
時計を確認して、電話をかけた相手は。
『よー芹生くん、どした?』
「すみません、今お時間平気ですか?」
『あー…ちょっとなら』
受話器越しに聞こえるざわめき。ハルさんが笑う気配に安堵して、口を開く。
「…翔さんから、会いたいって。連絡あったんですけど…」
『ん、そうか…芹生くんが嫌じゃなければ会ってほしい、かな。当日はちゃんと尾行するし、もしかしたら何かの情報が得られるかもしれない』
少し遠慮がちなその声音は、普段の彼と違って。心配してくれているのが伝わって来る。
不安ではあるけれど、尾行という形で彼も着いてきてくれるのなら…会っても良いかな、と思う。
「……分かりました。日時が決まったらまた連絡しますね」
『了解。本当に大丈夫か?』
「怖い気持ちはあります。…でも、まだ翔さんが悪い人だって決まったわけじゃありませんから」
『…いい子だなぁ芹生くんは……』
仕事に戻るという彼にお礼を告げて、電話を切る。
翔さんと関わったのは少しの間だった。でも、あの笑顔が偽物だとはどうしても思えなくて。
信じたいと願う俺は、愚かなのだろうか。
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