134 / 330

134.

それから数日後。例の彼からメッセージが送られてきて。 あまりのタイミングの良さに、一度は忘れかけていた疑問が再び首をもたげる。 久しぶりにまた会って話したい、と。 なんてことの無いその文章にどう返事をしようか迷った。 時計を確認して、電話をかけた相手は。 『よー芹生くん、どした?』 「すみません、今お時間平気ですか?」 『あー…ちょっとなら』 受話器越しに聞こえるざわめき。ハルさんが笑う気配に安堵して、口を開く。 「…翔さんから、会いたいって。連絡あったんですけど…」 『ん、そうか…芹生くんが嫌じゃなければ会ってほしい、かな。当日はちゃんと尾行するし、もしかしたら何かの情報が得られるかもしれない』 少し遠慮がちなその声音は、普段の彼と違って。心配してくれているのが伝わって来る。 不安ではあるけれど、尾行という形で彼も着いてきてくれるのなら…会っても良いかな、と思う。 「……分かりました。日時が決まったらまた連絡しますね」 『了解。本当に大丈夫か?』 「怖い気持ちはあります。…でも、まだ翔さんが悪い人だって決まったわけじゃありませんから」 『…いい子だなぁ芹生くんは……』 仕事に戻るという彼にお礼を告げて、電話を切る。 翔さんと関わったのは少しの間だった。でも、あの笑顔が偽物だとはどうしても思えなくて。 信じたいと願う俺は、愚かなのだろうか。

ともだちにシェアしよう!