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翔さんとの待ち合わせより少し前。ビルの間にある細い路地でハルさんと向かい合っていた。 「俺のことは気にしなくて良いから…取りあえず、怪しまれないように」 「…はい」 頷くと緩く頭を撫でられる。 聞きたいような、聞きたくないような。何とも言えない感情が心の中で渦巻く。 口を開きかけて、やめた。 「……ルイも後から来るってさ」 思わず目の前の彼をまじまじ見てしまう。人の心が読めるのか、それとも俺が分かりやすいだけか。 「そろそろ時間だろ?行っといで」 「い、行ってきます……」 ひらりと手を振るハルさんに見送られて。 「久しぶり!…あれ、芹生くん身長伸びた?」 頭に手を当てて笑う翔さんは相変わらず。挨拶して一緒に歩き出す。 何軒か気になる店を覗いて、奇抜なメガネを試着して遊んだり、可愛い犬に癒されたり。 高校生の頃に戻ったような感覚で、楽しかった。 「芹生くん、何飲む?買ってくるよ」 「えっ、俺も行きます!」 しばらく経ってから入ったコーヒーショップ。ナチュラルにレジへ向かおうとする彼を見て、慌てて立ち上がる。 「だいじょーぶ、席取っといて」 やんわり押し留められて座り直すしかなかった。 (……やっぱり普通のいい人だよなぁ) ハルさんには申し訳ないけれど、今日の尾行は無駄足に終わりそうだ。

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