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135.
翔さんとの待ち合わせより少し前。ビルの間にある細い路地でハルさんと向かい合っていた。
「俺のことは気にしなくて良いから…取りあえず、怪しまれないように」
「…はい」
頷くと緩く頭を撫でられる。
聞きたいような、聞きたくないような。何とも言えない感情が心の中で渦巻く。
口を開きかけて、やめた。
「……ルイも後から来るってさ」
思わず目の前の彼をまじまじ見てしまう。人の心が読めるのか、それとも俺が分かりやすいだけか。
「そろそろ時間だろ?行っといで」
「い、行ってきます……」
ひらりと手を振るハルさんに見送られて。
「久しぶり!…あれ、芹生くん身長伸びた?」
頭に手を当てて笑う翔さんは相変わらず。挨拶して一緒に歩き出す。
何軒か気になる店を覗いて、奇抜なメガネを試着して遊んだり、可愛い犬に癒されたり。
高校生の頃に戻ったような感覚で、楽しかった。
「芹生くん、何飲む?買ってくるよ」
「えっ、俺も行きます!」
しばらく経ってから入ったコーヒーショップ。ナチュラルにレジへ向かおうとする彼を見て、慌てて立ち上がる。
「だいじょーぶ、席取っといて」
やんわり押し留められて座り直すしかなかった。
(……やっぱり普通のいい人だよなぁ)
ハルさんには申し訳ないけれど、今日の尾行は無駄足に終わりそうだ。
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