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138.
けたたましく響く爆音。近付いてくるそれに、ハルと目配せをして身構えた。
俺達の手前で止まった大型バイク。ライトを消して降りてきた人物はヘルメットをしていて顔が分からない。
躊躇いもなく近寄って来ると、片手を突き出した。華奢な指に掛けられていたのは銀色の鍵。
意味を掴みかねて、思わず眉を潜めた。
「……シャッターの鍵。詳しいことは中に居る男に聞いて」
そのまま半ば強引に押し付けられ受け取る形になってしまう。用は済んだとばかりにさっさと背を向ける、その女性の後ろ姿は見覚えのありすぎるもの。
「何で……」
どう続ければ良いか考えあぐねる俺を振り返った彼女が、笑う気配。
「…これで償えるとは思ってないけど。そんなことより、早く行かないと…暴力よりよっぽどエグいこと平気でするような奴よ、アイツは」
「ルイ!」
背後のハルに急かされ、後ろ髪を引かれる思いで踵を返した。
「……いいとこあんじゃん、ミカも」
ぼそりと呟く姿に返事はせず、手の中の鍵を黙って差し込んだ。
彼女も言っていた通り、これで帳消しになったわけじゃない。けれど、少なくとも根っからの極悪人ではなかったようだ。
それよりも問題は、この先で待ち受ける彼の方だろう。
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