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139.
頬に鋭い衝撃を感じて、急速に意識が浮上する。
痛む箇所を触ろうと手を動かすも頭上で何かに拘束されていて。それどころか視界も真っ暗。
半ばパニックになりながら、必死で身を捩る。口に詰められた布のせいですぐに息が上がって、涙が滲んできた。
「おはよー芹生くん」
敏感になった聴覚は、違 うことなくその声を捉えて。まさか―――と愕然。
「…流石に目隠しだけは取るか」
目元に触れる指先の感覚に思わず身を震わせる。ぼやけた視界が明瞭になって、戻ってくる光。
「うん、やっぱり綺麗な顔してる」
満足そうに目を細めながら、頬を撫でたこの人は。
(………しょう、さん…)
頭の中を一瞬で駆け抜けた、ハルさんの忠告。
そんなの嘘だ、と。信じたいと思っていた。
情けないことに、ぶわりと涙が溢れてくる。こんなことをしている張本人に見られたくなくて、固く目を瞑った。
「あー泣くなって…。芹生くんの顔、好みだからさ。困るんだわ」
苦笑する彼は取ったばかりの目隠しをまた付けて。再び闇の中に放り込まれる。
「…昔から、好みのタイプは一緒だった。芹生くん見てすぐ分かったよ」
ギシリと鳴った音で初めて、自分が簡素なベッドに寝かされていると悟った。この扱いも相まって、少なからず身の危険を感じる。
「どうせ助けに来れないだろうし、お前ら好きにしていいよ」
離れた場所から聞こえるその声音は、不自然なほど感情が削ぎ落とされたもので。
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