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148.
緩やかに上昇する意識を感じて、嫌だと首を振る。
あんな地獄の続きを思うだけで身体の痛みが増す気がした。
相変わらずの暗闇。あらん限りの力で抵抗しているのに、いともたやすく押さえ付けられて。
すると一瞬、ふわりと鼻腔をくすぐる甘い香り。ここにはいないはずの人が浮かんできて、思わず動きを止めた。
「…俺のこと、見える?」
そんな、まさか―――…
もう目隠しは付けられていない。
そこで初めて気付いて、恐る恐る目を開けると。
「みつ、い……さん…」
くしゃりと顔を歪めた彼は、俺の肩に額を押し付ける。
か細く謝り続ける姿が何だか頼りない子供のように感じて、まだ痛む腕で頭を撫でた。
深呼吸して周りを見渡すと、すぐ後ろにハルさん。眉を下げながら苦笑している。
「どうして、ここに…?」
顔を上げた後もしばらく言葉を探しあぐねている様子の彼。
そっと俺の両手を包んで、ようやく口を開いた先は。
「…助けに、来たんだ。君を……ずっと、護るために」
どくん、と。心臓の跳ねる音を聞いた。
形の良い唇から紡がれる愛を理解した瞬間、訳が分からないほどの歓喜に襲われて――赤くなった顔と熱くなる目頭を自覚しながら、今度は俺が額を押し付ける番だった。
(な、んだ、これ…っ)
自分の顔と対照的に温度が下がった手のひら。よく目を凝らせば、彼のそれは僅かに震えている。
心配、緊張、羞恥。
この中のどれが原因だとしても、見てしまえばもう誤魔化すことは出来ない。
自分の気持ちは一番良く分かっているから。
俯いたまま、瞼を閉じた。
「…ありがとう、ございます……」
落とした字面 以上の意味を、彼は果たして汲み取ってくれるだろうか。
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