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159.
「今日は流石に街中クリスマスムードで溢れてるわね~」
クリスマスイブ。
鼻歌混じりに呟くリンさんを見やって、静かにため息をついた。
今、できれば触れて欲しくない話題。
「ルイは今晩、あの子と過ごすの?」
ひょいと顔を覗き込まれれば、とっさに取り繕うことができなくて。
「……楓くんには…嫌われた、と思う」
斜め下を見ながら絞り出した声は何とも情けないもの。
いたたまれなくて、そっと目を伏せた。
「…それは本人に言われたこと?」
予想よりも落ち着いた声音に、思わず視線を上げる。
もっと騒がしく理由を聞かれるとばかり思っていたのに。
細められた瞳はどこまでも静かだ。
「きっとそうじゃないでしょう?なら決めつけない方が良いわよ…ね?」
柔らかく念押しされて、ふと思い浮かべた面差しは。
―――そうだ、決めたじゃないか。
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