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161.
もうすぐ細田との待ち合わせだと時計を気にしていた、クリスマスイブ。
「…え、」
震えるスマホを取り出せば、予想もしていなかった名前が。
「……はい」
しばらく経っても振動を続ける様子を見て、迷った末に通話ボタンを押した。
遠く聞こえる喧騒。
(こんな日でも仕事か…大変そうだな)
いや、こんな日だからこそ稼ぎ時なのかもしれない。
ぼんやり考えながら耳を傾けて。
謝罪に含まれる僅かな震えを聞き取ってしまったら、もう駄目だった。
本当は色々言いたいこともあったのに。
「ミウちゃんを、触らせてくれたら。…それで良いです」
俺の返答を聞いた三井さん。
耐えられないといった風に吹き出す笑い声を懐かしく感じた。
自分から逃げ出したくせに、会いたい――と。
一瞬でも思ってしまう俺は身勝手だろうか。
「…あ、の……っ」
三井さんが好きなのは、きっと俺の顔だけ。
今までの経験上、幸せになれないことは分かり切っているのに。
顔だけでも良いから好きでいてほしい、なんて。こんな風に願うのは初めてかもしれない。
あれだけ恨んだ容姿。
それを一瞬にしてありがたく思う、現金な自分が嫌で。
ちらりと再び時計に目をやった。
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