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169.
腕から逃れたミウちゃんが歩み寄る先を見て、どきりと心臓が跳ねる。
もしかして、聞かれてしまっただろうか。
「…お待たせ」
ひやひやする俺をよそに、別段変わった様子のない三井さん。杞憂だったことにほっとして、メニューを受け取った。
響いたチャイムの音に顔を上げる。
しばらくして玄関から聞こえてきた声は、馴染みのあるそれで。
「おー芹生くん、久しぶりだな!」
「ハルさん…」
ぽかんとする俺を不思議に思ったのか、首を傾げる彼。そのまま隣に腰を下ろして。
「ハルだけ?」
「あー…いや、細田くんも後から来るってさ」
問われて答える、その様子にどこか違和感を覚えたが思い当たる節もなく。
ともあれ、呼ばれたのは俺だけではなかった。その事実にひどく落ち込むのは仕方ない。
変に期待してしまった自分が恥ずかしくて、ぎゅっと唇を噛んだ。
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