173 / 330

173.

そろそろ帰るというハルを連れて、マンションのエントランスまでやって来た。 「…で?」 タクシーを待つ間、見慣れた横顔に話しかける。 「1ミリも酔ってないくせに…何か狙いがあったんだろ」 「……ありゃ、バレてた?」 ホストがあのぐらいの酒量で酔ってたまるか、と非難の視線を向けるも。悪びれず頭を掻く姿に嘆息して、俯いた。 「全く…何年一緒に居ると思ってるんだか」 「はは、そりゃそーだ。まぁ…どんなタイプが好みなのか、純粋に気になったのもあるけど――」 立ち上がる彼の背中を目で追って。 「…お前ら色々こじれてそうだったから、さ」 振り返った、その表情。言外に『大丈夫か』と問われて薄く笑う。 「……もう、平気だよ」 心は決まったから。

ともだちにシェアしよう!