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177.
どうしてそのまま送り出してあげられなかったのか。
(…あんな、こと。言うから)
触れるつもりはなかったのに。最後だ、と言い張る自分に負けてしまった。
「おはよ、ルイ」
目を細めたハルに軽く手を上げる。適度な喧騒が耳に心地よい。
そういえば居酒屋は久しぶりだとぼんやり考えるうちに、運ばれてきたビール。乾杯してしばらく、切り出したのは向こうだった。
「…で?今日は何のお話ですか」
分かりきっているくせに訊ねる笑顔が憎らしい。ため息をついて口を開く。
「友達…も、やめた方が良いのかな」
誰と、とは言わない。それでも察してくれたのか、静かに目を細める様子を眺めた。
「普通の大学生ならまだしも…わざわざ男で、しかもホストの俺が友達で居たら…色々、こう……悪影響があるかもしれないと思って」
反応のないハルに焦れたわけじゃない、けれど。言い訳するように続けたそれは、半分が本当。
「…他の理由もあんだろ」
苦笑しながらぼそりと落とされた言葉に、やっぱりお見通しかと頭を掻く。
「近くに居たら、諦められない」
簡潔に告げてジョッキを傾けた。
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