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188.
随分と長く感じた1月が終わり、2月を迎えた。
ルイさんとは友達のままだけれど、それでもやはり傍に居られるのは嬉しい。まだ好意を持っているというのも、きっと原因のひとつだろう。
「車停めるから、先に上がってて」
運転席の彼から鍵を受け取り、車を降りた。
なんとなくぼんやりした関係だと分かってはいる。曖昧な現状に満足しているわけではない、が。
(下手に動いて嫌われるよりは…なぁ)
抱えた食料品の袋を落とさないようにエレベーターへ乗り込んだ。慣れた通路を進む、その先。
(……え?)
ドアの前に佇む1人の女性。腕時計を眺めてため息を吐く姿に、思わず足を止めた。
年齢は20代後半だろうか。ウェーブがかった焦げ茶の長髪を肩下あたりまで伸ばしている。遠目から窺う相貌は端麗で、どこか自分の母親を彷彿とさせた。
「…あの、」
立ち止まっていても仕方が無い。意を決して話しかけると、綺麗な二重の瞳がこちらを向く。
「ル……三井さんに、ご用ですか?」
「…ええ。あなたは?」
頭から爪先までざっと眺めた後、女性にしては低く落ち着いた声音で問われた。
「……友達、なんです。もう少しすれば三井さんも来ると思いますけど―――あ、」
噂をすれば到着か、と。響く足音に後ろを向いた。
「…久しぶりね」
俺を通り越した視線が彼女を捉える。ルイさんの顔に浮かんでいたのは紛れもない驚愕。滅多に見ることのないそれに、僅かな胸騒ぎを覚えた。
「なん、で……」
掠れた声が、どれほどの驚きかを示してくれる。双方を見比べて、噛んだ唇。
「あなたに会いたくなったから来たの、――…晄」
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