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195.
近寄って見ると、ディスプレイには『ルイさん』の文字が。
あまりにもタイムリーな状況に少し戸惑いつつ、通話ボタンを押した。
「…もしもし」
『遅くにごめんね。今、平気?』
肯定と共に訪れた、しばしの沈黙。良い話題ではないことを悟ってそっと目を伏せる。
『この前の…瑠依、覚えてるかな』
「……はい」
会いました、と言うわけにもいかず。黙って続きを待つ。
『気付いてるかもしれないけど…昔、付き合ってたんだ』
「…そう、ですか」
無意識に胸元を握りしめた。この先は聞きたくない、と拒絶したがる感情。
『それで……』
――また、付き合ってみようと…思う。
電話口の向こうで彼がどんな表情をしているのかは分からない。何の意図を持って俺に伝えたのかも、分からない。
喚き散らしたいのをぐっと堪えて。
ただ言えることは。
「…良かったですね。お幸せに」
思ったより穏やかな声が出て、何故だか目頭が熱くなった。けれど、ここで泣いたら負けのような気がする。
『………うん、ありがとう』
それじゃあ、と響く不通音。
急に床が近くなって、ああ崩れ落ちたのかと自覚する。どこか冷静な思考のまま、カーペットに染み込む水滴をぼんやり眺めていた。
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