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197.
「もうすぐバレンタインか~」
テレビを眺めていた瑠依の弾む口調。俺の生返事に焦れたのか隣へ移動して来る。
「当日も仕事?」
「…多分」
「それなら昼は一緒に過ごせるわね」
嬉しそうに笑う、その表情。
昔なら俺も笑顔を返して、頭を撫でて。それから―――…
「晄?」
「ごめん、聞いてなかった」
彼女は何か言いたげに眉を寄せると、それでも口を噤んだ。しばしの沈黙。
「…ねえ、せっかくだから芹生くんも呼ばない?」
良いことを思いついたと言わんばかりの口調に、思わずそちらを凝視する。彼女は可愛らしく首を傾げたまま。
「それと…ハルくん?まだ仲良くしてるなら彼も誘いましょうよ」
微笑む瑠依が何を考えているのか知りたくもない。面倒になって、ため息を吐いた。
それを了承と捉えたのか張り切る姿を尻目に、黒髪の彼を思い出す。
どんな形であれ、また話せることが嬉しいと。
そう思ってしまう自分は本当に勝手だ。
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