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204.

重い足を半ば引きずるようにしながら、見慣れた扉の前に立った。ため息を吐きそうになって、自らを叱咤する。 しっかりしなくては。 暗い顔をしていたらせっかく誘ってくれたルイさんに申し訳ない。それに――… 佐々木さんの前で落ち込む姿を見られるのが、彼女に負けてしまったようで何となく嫌だった。 (まぁ…もう勝ち負けもないんだけど) ふ、と笑ってインターホンを押した。 軽い足音が近付いて、出迎えてくれたのは佐々木さん。 「いらっしゃい、寒かったでしょう?」 入って、と促す彼女は柔らかな微笑みを湛えていて。毒気を抜かれるようなそれに思わず会釈で応えた。 (……いらっしゃい、か) まるで自分の家のようだ。先に着いている人がその言葉を使うとは分かっていても、やはり面白くはない。 「お邪魔します」 彼女の後についてリビングへ入る。ふわりと立ち込める甘やかな匂いは街中(まちなか)で嗅ぎなれたもの。普段の香水を上書きするそれに、何故だか安堵した。

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