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瑠依の手料理は文句なしに美味しい。けれど。 (…芹生くんが作ってくれた方が、好きだな) 出来ることならもう一度あの味を堪能したかった、と。ぼんやり考えながら箸を進める。 隣の瑠依と目の前の芹生くんは案外楽しそうに会話していて、予想でき得る最悪の事態は免れそうだと安心したのもつかの間。 「――…でも芹生くん、すごくモテるんじゃない?」 「そんなことないですよ…俺なんて全然、」 「とっても優しいから素敵なお嫁さんと結ばれそうね」 優しい笑顔とは裏腹に、彼女の放った言葉はそのまま俺の心に刺さる。悪意が無いからこその鋭さ。 曖昧に頷く彼もまた心なしか沈んだ面持ちで。改めて瑠依の奔放さに苦笑した。 ソファーに移動してしばらく。食後のコーヒーを煎れて戻ると、入れ替わりに芹生くんが台所へ向かった。 特に気にせずテレビを付ける。キッチンに背を向けるようにして置かれたL字型の短辺に座った瑠依がため息を吐いて。 「…ねえ晄、ピアス入らなくなっちゃった」 「だったらまた開ければ良いのに」 「仕事柄あんまり拡張は出来ないから…完全に塞がってからもう一度開けるわ」 手招きされるまま近寄って見ると、なるほど今にも塞がりそうなピアスホール。違和感があって耳から抜き取ったは良いものの、小さい穴に入れられなくなったのだという。 「…世話が焼けるなぁ」 「鏡が遠くて」 普段は完璧な彼女が不意にこうした面を見せるたびに、まるで昔に戻ったような錯覚を起こす。あの頃は頼られることが少ない分、それだけ嬉しかったものと記憶している。 「出来たよ」 「ありがとう、助かった」 元の場所に腰を下ろした瞬間、後ろから何かが落ちる音。

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