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208.
何故あのタイミングで。
端正な相貌の効果もあり、さながら人形のように見えた。
怒っているのか、悲しんでいるのか。それすらも読めない表情。
「芹生くんが作ったお菓子、食べたかったわね」
「…うん」
「コーヒー、おかわりする?」
本気で惜しがっているような様子の瑠依に頷きかけて、自分で淹れようと台所へ向かった。
ドリップしながら、ふと先程の状況を思い出す。
(確か、このあたりで…)
芹生くんが箱を落とした場所。同じ視点に立った瞬間。
「………っ!」
自分がしたこと。頭の中でフラッシュバックする、瑠依の言葉。
(まさか、そんな……)
やけに鼓動が大きく聞こえる。背後で鳴り響くのは、まるで警報のような湯沸かし器の音。
震えそうな手を強く握って、玄関へ駆ける。
「え…晄!?」
「ごめん、ちょっと出る!」
慌てて追って来る瑠依に言い放って、家を飛び出した。
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