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213.

故郷の土を踏んだのはついこの間だったか。2月も半ばになると北海道はまさに極寒の地。コートの襟を合わせて足早に歩く。 見慣れた背中を目にして、思わずほっと息が漏れる。 「…ただいま」 「最近よく帰ってくるな、お前」 「んー…そうかも。兄さん……暇なの?」 言葉を濁しつつ車に乗り込む。暖房で温められた車内は快適だ。 「またそうやって可愛げのない事を…ウチまで遠いから迎えに来てやってんだろ?」 「タクシー捕まえるのに」 「ばーか、金は無駄遣いすんな。将来の為に貯めておけ」 「……うん」 前を向きながらハンドルを握る兄の横顔をちらりと窺う。特に他意のない言葉だったとしても、今の精神状態にはよろしくない。 『将来』 耳にするたび、様々な人の顔が浮かぶ。 年齢からすると、自分もそろそろ落ち着かなければ、とは思うけれど。家族のこと、仕事のこと。考え出せばキリがない。 曇る窓ガラスを指でなぞって、過ぎ行く景色を眺めた。 「急に帰ってくるなんて言うからびっくりしたわよ~もう、どうしたの?」 「ちょっと話したいことがあって」 「何よ改まって…あ、さては結婚の話ね?」 うふふ、と笑う母親も瑠依を気に入っている。曖昧に微笑んで父親に向き直った。 「まあ、取りあえず今日は休みなさい。話は明日でも平気だろう?」 頷いて部屋を後にする。とっくに陽は落ちて、辺りを支配する静寂。キン、とした空気に身を震わせながら明日を考えた。

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