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「…親不孝者で、ごめん」 素直に頭を下げると、ややあって父親の細いため息が聞こえた。 「全くだ。お前は兄弟の中で一番心配を掛ける…昔から」 付け足された短い懐古。何とも言えない気持ちになる。 「…ウチは健吾がしっかり継いでくれた。好きなように生きなさい」 普段滅多に見ることの出来ない、父親の淡い微笑み。目頭が熱くなって、ただ首を縦に振った。 「相手の(かた)は…大丈夫なの?」 眉を下げる母親。胸中の彼を認識した途端、たまらなく会いたいと感じる。 「…これからちゃんと話すよ」 「そう……落ち着いたら一緒に遊びにいらっしゃい、とっておきの部屋を空けておくから」 先程よりも柔らかな笑みを見せた彼女に感謝する。続いてここまで黙っていた兄が漸く口を開く気配が。 「まー…なんだ、うん。俺もいい大人だから偏見とかはないし。決めたからにはしっかりやれよ?」 「ありがとう、兄さん」 背中で受ける兄の激励はいつも少し力が強い。思わずお互いに吹き出してしまう。 「ああ…そういえば、(りく)はどうしてる?」 「淕…?」 久しぶりに聞く3つ違いの弟の名前。頷く父親は衝撃の事実をいとも簡単に告げた。 「お前と同じ―――歌舞伎町で、ホストになったらしい」

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