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聞き終えた彼女は深いため息をついて、第一声。何が飛び出して来るのか身構えていると。 「…行動力もついたのね」 「え?」 「彼……芹生くんのおかげかしら」 唖然とする俺を尻目にビールをおかわり。ふ、と笑ったその顔はどこか晴れ晴れとしていた。 「…ヨリを戻して、結婚まで考えたのは本当。でも…」 ―――勝てないって、思った。 全てが込められている、主語のない一文。見つめる先の彼女は再び口を開く。 「よっぽどあの子が大事なのね。気付いてた?一緒に居る時、いつも私の向こう側に彼を見てるのよ…貴方」 「…ごめん」 「謝られたら余計に惨めだわ」 拗ねたように呟いて、運ばれてきたビールをほとんど空にする。 「あーあ、この歳で彼氏探しか…見つかるかしら」 「…大丈夫だよ」 こんなにも素敵な女性を放っておくはずがない。あまり言うとまた睨まれかねないけれど。 「ぜーったい晄より良い人見つけて、幸せになってやるんだから!」 酔いが回ったのか、俺を指さして意気揚々と宣言する彼女。 「…ちゃんと幸せになりなさいね。芹生くんと、2人で」 幾分か落ち着いた声のトーン。いつになく真剣な瞳に誓う。 「約束する」 「……うん」 満足そうに頷いて立ち上がった彼女は少しよろめく。慌てて支えようとするも、やんわり断られて。 「大丈夫、1人で帰れるわ。じゃあね……三井さん」 ひらりと手を振り消えて行く。 最後まで、大人だった。 「…ありがとう」

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