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俯いた楓くんの表情は見えないが、髪から覗く耳は朱に染まっていて。ふわりと抱きしめ密かに目的を遂行する。 「…えっ、あの……!」 「うん。良く似合ってる」 華奢な首元で光る金色。何度か口を開閉させた後、はっと気づいたような素振りを見せる彼。 「こ、これ……俺が見てた…」 返事の代わりに頬を撫でればみるみるうちに(ほど)ける目元。羞恥と感謝が綯い交ぜになった瞳を向けられて、自分は心底彼に惚れ込んでいると思い知った。 「それは、誕生日プレゼント」 「でも両方なんて…」 「イベント事と纏めて祝われるっていうのが嫌だったから、俺は。それに、ホワイトデーと一緒にしたくなかった」 新年の浮かれた雰囲気に流されて、誕生日を重視することも無かった幼い頃。嬉しいような、けれどなんとなく物寂しい気持ちを味わったと覚えている。 「…ありがとうございます」 「どういたしまして」 はにかむ彼に微笑んで、ふと脳裏をよぎるのは。 嬉しそうに胸元を眺める姿に問いかけた。 「…ねえ。プレゼントに指輪とかネックレスを贈る意味、知ってる?」 「意味…ですか、?」 「調べれば多分すぐ出てくるよ」 言われてスマホを取り出した彼が赤面するのは数分後。想像通りの反応に、緩む口角を感じた。 「み、三井さん…」 「好きだよ」 言葉尻を掬い取って告げれば更に赤みを増す頬。虐めすぎたか、と反省しながら苦笑い。 『愛情』や『誓約』を意味する指輪やネックレス。輪になっているその形状から、相手への束縛や独り占めしたい気持ちを表すという。 「………ずるい」 「ごめんね?」 ふしゅー、と音がしそうなほどしぼんだ彼に緩く睨まれて。取りあえず謝ってみた。 「…いつか。俺も、プレゼントします」 予想の上を行く返事。いつだって彼はそうだ。 たまらず腕に閉じ込める。おずおずと背に回る腕も、何もかも。愛おしくて仕方がない。 「ありがとう。楽しみにしてる」 離れて笑う楓くんが眩しくて、目を細めた。 シンプルなデザインのネックレス。 照明を浴びるブランドショップのショーケースに鎮座している時よりも、ずっと輝いて見えた。

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