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「か・え・で・くーん!」
久しぶり!と相変わらずの調子で背中を叩かれ、強制的にお辞儀をする形になってしまった。
「ご、ご無沙汰してます…」
以前までは苗字で呼ばれていた気がするのに。何故だ…と問う暇もなく3人だけの宴会が始まる。
「誕生日おめでとう、リンさん」
「いつまでも若く居たいのにねぇ」
からからと笑うリンさんは相変わらず綺麗で。三井さんの隣に並んでも引けを取らないその容姿。
自然と下がってしまう目線を感じながらため息を飲み込んだ。
「…リンさんが酔う前に言っておくと」
「何よ改まって~」
「楓くんと、付き合うことになった」
弾かれるように顔を上げれば、鳶色の瞳が優しく細められていて。何もかも見透かすような視線を受けて震える心。
「あら、そうなの!?私の誕生日よりおめでたいわね、もう2人のお祝いにしちゃいましょ!」
手を叩いて喜ぶ彼は一転、ふと穏やかな表情を浮かべる。
「…幸せに、ね」
関わりが浅いにも関わらず、俺を慈しむ気持ちが込められた言の葉。
短く、そして暖かい祝辞にじわりと滲む視界。
「……ちょっと、楓くん泣かせないで」
「えっ!?あらごめんなさい、枝豆食べる?」
枝豆で機嫌取るのか、という呆れたような呟きに思わず吹き出してしまう。
そのまま和やかに過ぎた時間。
「…どうしてこうなった」
「明らかに飲みすぎですね…」
泥酔状態を超えたリンさんは、もはや人形のように大人しい。取りあえず迷惑を掛けないよう店を後にし、手近な石畳に座らせる。
「リンさんのアトリエまで少し歩くから、水飲ませておきたいな…」
「あ、じゃあ俺買ってきますよ」
距離を考える様子の彼に告げれば、申し訳なさそうに紙幣を渡されて。なるべく急ごうと考えながら背を向けた。
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