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233.
4月。進級と同時にお決まりの行事ラッシュ。
オリエンテーションだけの今日は早く帰れると喜びを噛み締めつつ、細田に連絡する。向こうもちょうど終わったらしい。
「久しぶり」
微笑む瞳にはどこか翳りが見えて、思わず首を傾げた。何の気なしに問うてみれば、場所を変えようと。
「…昨日、聞いたんだけど」
「うん?」
「ハルさんが――入院した、って」
「え……!?」
小さく息を飲めば、ゆっくりと伏せられる瞼。覆われた瞳の色を窺い知ることはできない。
「…落ち着いたら行こうかと思う」
「うん…俺もルイさんに聞いてみるよ」
ふと、ひとつの疑問が首をもたげる。
細田は何故ここまで落ち込んでいるのか。
もちろん自分も衝撃を受けた。親しい人が入院したとなればそれは当たり前だ。けれど、目の前の彼は衝撃以上の何かを感じて塞ぎ込んでいるように見えてしまう。
「あの、さ…」
現れた双眸を眺めながら考えること暫し。
「…やっぱり何でもない」
友達だからといって色々詮索するのは野暮だろう。話したいと思った時に聞いてあげられる、そんな関係で良い。
俺の自己完結を受けて。変なやつ、と笑ってみせる彼の頭を撫でた。強ばる顔に一瞬の瞠目、次いで歪んだ表情。
「すぐ治るよ……きっと」
怪我なのか、病気なのかは分からないけれど。
頷きながら俯く頭を、しばらくそうして撫でていた。
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