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あの日から、ぱったりと連絡が途絶えた。 元々避けていたのは俺だし、向こうも別れる気で居たのだから好都合と言うべきか。 「楓、久しぶり」 「山田先輩…!」 5月に入り、茶道部サークルの新歓飲み。OB·OGも何人か顔を出してくれていて。懐かしい顔触れに思わず笑顔を浮かべる。 「とうとうお前らの代が一番上か」 「あっという間ですね」 目の前で杯を傾けるこの先輩は、俺が新入生として入った時に3年生だった人。男性の少ないこのサークルで長を務め、誰からも信頼されるその人柄と、稀に見る和服の着こなしや茶を点てる技術は俺の憧れだ。 「またお会いできて嬉しいです」 程よく酒も回り、ふわふわした心地良さの中で微笑む。少し熱を持った頬に手を当てていると。強い視線でこちらを見つめる彼。 「先輩…?」 「……や、何でもない。水貰ってくる」 ぽんと頭に置かれた手のひら。どうしても三井さんと比べてしまって、先輩の不可解な態度について考えが及ぶことは無かった。 「…ぅ…きもち、わる………」 三井さんのことを忘れようと、その後も飲み続け。周りの静止を振り切った俺はかなりの馬鹿だろう。 呆れながら背中をさすってくれる山田先輩にも迷惑を掛けてしまっている。回らない頭の片隅で申し訳ないと思いながら、立ちあがろうとした。 「お前……どんだけ飲んだんだよ」 「…覚えて、ない、れす………」 覚束無い足取りの俺を支えるようにして、先輩が声を上げるのをぼんやり聞いていた。 「俺こいつ送って行くから、後よろしく」 「はーい」 「気をつけてねー!」 そうして店を出たのが、少し前。 いや、少し前―――? 「え……っ、いた…!」 目の前には何故か山田先輩。しかも寝ている。寝顔も整っている人は羨ましい限りだ、と呑気に考えている場合ではない。 慌てて体を起こせば回る視界、激痛が走る頭。 「んー……あれ、起きた?」 立てた肘で頭を支える先輩は欠伸をひとつ。背後のカーテンから差し込む光はどう見ても朝日のそれ。 「昨日すごかったんだから、お前…もーどろっどろのぐちゃぐちゃ」 目を細める彼は上体を起こして。つっ、と背中を辿る指。 「…可愛かったよ」 何も纏っていない素肌に冷や汗が伝った。

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