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家に来るという楓くん。 あれ以来会っていない彼を、どんな顔で迎えれば良いのか。 「…お久しぶりです」 別れ話かとため息を吐いて俯く。もうなりふり構っていられる余裕もない。 震える彼の様子に気付くことも出来ず。 「色々、あったんですけど…ちゃんと話しておいでって、雅さんに言われて」 「…淕?」 こくりと頷く彼は、どこまで人を不安にさせれば気が済むのだろう。 (……まあ、俺も同じか) この職業に就いている自分が言えた義理はない。それに――― きっと、もうすぐ関係は消えてしまうのだから。 「相談、乗ってもらったんだ」 「…はい」 淡く微笑む彼を見て、どうしてもイライラする自分を止められなかった。大人気無いとは分かっていても。 「俺が大学入ったばっかりの時に部長だった人と、新歓飲みで久しぶりに会ったんです。俺……その、飲みすぎちゃって。酔ってる時の記憶が無いんですけど…」 嫌な予感がする。増えた眉間の皺。 「あの……朝、ええと、…ホテル……に、居て。でもっ…そんなことする人じゃないんです…多分……」 庇う姿勢を見た瞬間、思わず立ち上がっていた。衝動に任せて彼の手首を掴むとそのまま寝室へ向かう。 戸惑い振り切ろうとする抵抗を感じて、舌打ちをひとつ。 今考えても本当にどうかしていた。 ただただ、何とも言えない虚しさを感じていた俺は――― 飲みすぎた理由も、なぜ淕に相談したのかも。 聞こうとはしなかったから。

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