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「どう?見れた?」 「雅さん……」 「情けない声出さないの、ほらこれ飲んで」 湯気の立つマグカップを差し出され、受け取る。白いそれはマスターお手製のホットミルクだという。 「…美味しい」 「落ち着いた?」 カランと響く氷の音に、目の前の彼を見やって頷く。ウイスキーらしきものを煽る雅さんはスマホを回収して。 「知り合いに頼んで特別に貰ったんだ。内緒だよ?」 「ありがとう、ございます…でも、なんで…?」 頭を下げる俺を眺めて腕を組む彼。ふっと浮かべた淡い笑みは酷く儚い。 「…昔から兄貴と張り合って生きてきたんだ、僕。性格は全然違うのに、好きになる物も興味のある事もおんなじで。…だから、君も」 ピタリと据えられた瞳があまりに真剣で、不意に感じる居心地の悪さ。手元に逸れた視線にほっと息を吐く。 「…コンビニで見た時に、何となくそんな予感はしてた。好きになるって。でも、やっぱり兄貴じゃなきゃ駄目なんだろうね。今日会って…はっきり分かったよ」 切なく響いたその独白に、胸が締め付けられるような気持ちになる。きっと、この人は、とても繊細なんだ。 「本当は無理矢理にでも奪いたいぐらいだけど、それじゃ意味ないから…ね。今後は雅じゃなくて名前で呼ぶこと。それで貸しはチャラにしてあげる」 「ま……淕、さん」 「うん。あとは兄貴ぐるみでも良いから、一緒に出かけよう」 満足そうに頷いた淕さん。今言っていたことが本当だとしたら、やっぱり嫌な思いをさせてしまった。 「ありがとうございます……あの、また、仲良くしてくれますか…?」 遠慮がちに出した提案を受けた彼は、虚を突かれたように目を丸くして。なんとも言えない表情を浮かべる。 「…隙が多いとか、そんな感じのこと言われない?」 ついこの間、耳にしたセリフ。瞬く俺に手を振って。 「あー…何でもない。兄貴も前途多難だなと思っただけ。僕で良ければいつでも相談乗るからね」 カラン、と。再び氷が音を立てた。

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