248 / 330
248.
真剣な眼差しで動画に見入る三井さん。
気を利かせて送ってくれた淕さんには感謝だ。
再生が終わると深いため息を吐いて顔を覆う。何を言うことも出来ずただ黙ってスマホを回収した。
「……ごめん」
ややあってぽつりと漏らされた謝罪。分かってもらえたことに安堵して、やっと胸のつかえが取れたような気がする。
「ごめんなんて、言葉じゃ…足りない、けど」
途切れがちに震える声音を耳にして。そっと隣へ移動した。
「三井さん。……三井さん」
2度目の呼び掛けでやっと顔を上げた彼の顔に浮かぶのは、今にも泣き出しそうな表情。急にたまらなく愛おしくなって、その瞳を見つめた。
「…俺のこと、好きですか?」
くしゃりと歪められた相貌。
「好きだよ。こんなに…人を、想ったことがなくて、自分でもどうしたら良いか……分からない、んだ」
たどたどしく続けられる言葉を受けて、そっと手を握った。今日も少し温度の低いそれを包んで大事に紡ぐ。
「俺もです。三井さんと…その、お付き合い…するようになって、たくさん考えました。初めての経験も多かったし、やっぱり戸惑う部分もあって…でも、好きだから。乗り越えたいな、と思います」
ただ握っていた指がいつの間にか絡んで。
近づく体、ゼロになる距離。
触れるだけのキスでここまで満たされるなんて初めての経験だ。離れる体温が惜しくて、自然と追いかける形になった。
「……楓くん。今度、泊まりにおいで」
ほとんど唇を合わせたままの距離で囁かれ、ぎゅっと縮まる心臓。直接的なセリフよりもよっぽど恥ずかしい。
どうか思い違いでありませんようにと、半ば祈りながら頷いた。
ともだちにシェアしよう!