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249.
あれから何度かやり取りをして、三井さんの家に泊まるのは今週末に決まった。いざ日取りを突きつけられると途端に緊張してしまう。
(……やっぱり、する…よな?)
きっと、抱かれる。
考えただけで土に埋まりたくなるが、そうも言っていられない。予備知識を仕入れようとネットに頼ったのが間違いだった。
(う、わ…ぁ…)
男性同士の性行為。専門用語から玩具、果ては動画まで。何となく予想はしていたものの、いざ目の当たりにすると未知の世界すぎて視界が揺れる。
(まず俺で良いのか、っていう…)
仕事で綺麗な女性を相手にしている彼のことだ。貧相な自分で満足してもらえれば良いが。
そもそも女性と違って面倒な造りの身体。恥ずかしさと申し訳なさとで泣きたくなりながらネットを閉じる。
約束の日が近づくにつれて、どんどん沈む気持ちはもう隠しようがなかった。
「…こんばんは」
「うん、いらっしゃい」
どんな表情をしているか、自分でも分からないけれど。俺の顔を一瞥した三井さんは薄く笑うだけだった。
「夕飯は?」
「あ、家で食べてきました」
そう、と頷いた彼の隣に座る。膝に乗ってきたミウちゃんを撫でながら感じる静寂が痛い。
「…シャワー、浴びてくる?」
軽く髪に触れられ、そちらを向けば。傾く双眸がふわりと細まった。
風呂場の使い方を教わる間もうわの空だった俺を、彼はどう思っただろうか。
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