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渡されたドライヤーを手に考える。 (やっぱり…) 自分では役不足だろうか。こちらを見ようともしなかった三井さん。想いに偽りがないとしても、性行為が出来るか聞かれればまたそれは別だ。 伸びてしまった髪を触りながら、そろそろ切ろうかとぼんやりする。バスローブを着たまま抱き上げるのが躊躇われ、撫でるだけに留めてミウちゃんと触れ合う。 「…ドライヤー、使い終わった?」 「あ、はい……っ、」 振り向いてすぐ後悔した。バスタオルを腰に巻いただけの姿はあまりにも壮絶な色気を纏わせて。以前、海で見た時よりも魅力的に感じるのは気持ちのせいか、はたまた染まった肌のせいか。 どちらにせよ早くなる鼓動を宥めながら何とか口を開く。 「あの……バスローブ…」 一着しかないものを借りてしまったのだとしたら、申し訳ない。途切れがちの真意を汲み取ってくれた彼は、薄く笑う。 「…まぁ、すぐ脱ぐだろうし。大丈夫」 もしかすると大変な人を相手にしようとしているのかもしれない。かもしれない、ではなくて確実にそうだ。 「先にベッド行っててくれる?」 もはや頷くことしかできなくて、そそくさと背を向けた。 微かなドライヤーの音を聞きながら、扉を見つめて深呼吸する。初めて入る部屋でもないのに、と自らを鼓舞して。 ベッドに寝るには勇気が足りず、端へ腰掛けた。ふと気になるのはあの紙袋。茶色いそれはまだあるのか。 (……あった) そろりと覗き込んで、何とも言えない気持ちを抱える。いくら顔が似ていたとしても結局は女性だ。 「ごめん、お待たせ」 半乾きの髪と、綺麗に割れた腹筋の組み合わせ。許容量を超えそうな艶で既にノックアウト寸前。 ゆるゆると首を振るだけで精一杯だった。

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