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目の前の枕に縋り付いて、吐き出す細い息。 うつ伏せの方が楽だからと身体をひっくり返されたのが随分前のように感じる。 端正な顔が見えないことに安堵していたのは最初だけ。今はもう、その瞳を捉えたくて仕方がない。 (だけど……) そうなれば必然的に自分の情けない表情を晒すことになる。二律背反で悩む俺の中からずるりと抜ける指。 「…考え事?」 「えっ、」 どうしてバレたのか、と背後を振り仰ぐ。少し眉を下げる彼は淡く笑って。 「…分かるよ。楓くんのことだから」 途端、きゅうっと縮まる心臓。何と言って良いか分からず、枕に顔を埋めた。 「んー…ちょっと妬けるなぁ」 歌うように呟いて、再び差し入れられた指の本数が増えている。不快感こそないものの、未知の圧迫感に慣れようと必死に息を吸う。 こんな、状況で。 三井さんのこと以外を考えろ、という方が無理な話なのに。 どうやら勘違いしている様子を感じて、もはや悔しいのか悲しいのか分からない。 「楓くん、そろそろ……、え」 ぽろりとシーツに吸い込まれる滴に驚いたのか、慌てる彼に抱きしめられて。非現実的な状況下の今、自分でも感情のコントロールができない。 「ごめん、痛かった…?」 「ちが、う……違い、ます…」 困惑したように頭を撫でる手のひらが優しくて、また溢れる涙。上手く言葉がまとまらないけれど。 「す……き、好き…っ」 「俺も。だから、無理はさせたくない。…大丈夫?」 気遣わしげに覗き込んでくる瞳は相変わらず凪いでいる。 でも。 ほんの僅か、見えた焦燥。彼も思いのほか余裕が無いのかもしれない…と。 認識してしまえば愛おしくて堪らない。 頷いて枕に顔を押し付ける。ドキドキとうるさい鼓動を耳の奥で感じながら息をついた。 「……じゃあ、」 「あの、っ…」 ピリ、と袋を切る音。我に返って、背後の腕を掴む。 わがままを、言うべきか迷った。

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