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*254.
触れられた腕が熱い。本音を言えばもう限界が近いけれど。ここは精一杯大人ぶって、揺れる瞳を覗き込む。
「…止めておく?」
「違う、んです…そうじゃ、なくて…」
戸惑いつつも、辛抱強く続きを待つ。以前なら想像もつかなかった自分の健気さに、さながら拍手を送りたい気分だ。
「か……か、お…見たい、です」
いじらしい言葉がじんわり浸透する、途端。ぶわりと赤面したのが自分でも分かった。言い放った当人の楓くんも、羞恥と情欲が綯い交ぜになった表情を浮かべている。
「な、ん……っで、君は…」
惚れた欲目もある。でも、それ以上に。
「え…っあ、の、みつ―――」
薄い肩をシーツから剥がして、正面を向かせた。少々乱暴になってしまったのはこの際許してほしい。
「…優しく、するつもり、だけど……ごめん」
きっと、無理だ。ひくりと震えた喉仏を撫でながら見つめる。捕食される側の彼が醸す色気に当てられたのは、俺か。
「いいです…三井さん、なら」
一瞬の後 、はにかんだ頬に口付けて自身の昂りを宛てがった。強ばる腰周りを緩く掴んで侵入を試みる。
「きっ、つ……」
思わず呟いてしまう程には狭く、そして熱い。口付けを送りながら呼吸を促して、何とか半分ほどをねじ込んだ。
「…大丈夫?」
「はい、り、ました…?」
「んーん……まだ半分」
薄く開いている瞼が震えた。ぼんやりと指先で腹部を辿った彼は唇を噛む。
「う、そ……そんな、おおきい…っ、え」
「…ちょっと、煽らないで」
舌打ちしたくなって、すんでのところで苦笑いに代える。やられっぱなしは性に合わない。
「ほら…がんばって、楓くん」
「…む、り……」
首を振る涙目に微笑んで、一気に腰を突き入れた。遅れて反る背中。締め付けのきつくなった内壁に眉を寄せながら息を吐く。
「…入った、よ」
「ほんと…です、か、?」
「うん。すーぐ持ってかれそ……」
濡れる目尻に触れて鼻先へ口付けた。ふにゃりと笑う楓くんが愛おしくて、それだけで下半身が重くなる。
「…すごいね、ここ。見せてあげたい」
誤魔化すように起こした体。広がる後孔の縁をなぞって感嘆すれば抗議のつもりか窄まる入口。
「ひどい、三井さん…」
「…平気そうかな」
睨みを利かせる彼からの視線はそれでも甘い。平常に近づいたことを判断しながら、薄く笑って覆いかぶさった。
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