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258.
慣れないことをした疲労もあり、もう瞼がくっつきそうだ。たゆたう意識の中で、ふと先ほどの言葉を思い出す。
「三井さん…」
「なぁに」
応える響きの、なんと心地良いことか。堪らず目の前にある胸板に擦り寄った。
「さっき……色々、調べたって」
「うん、言ったね」
髪を滑る指が、どこまでも優しい。甘い感覚に緩む思考を気にしている余裕はなかった。
ただの、本心が露呈する。
「…もう、みないで」
「楓くん…?」
残った気力をかき集めて、ゆるゆると瞼を上げる。琥珀とも蜂蜜ともつかない不思議な虹彩を見つめながら。
「他の、ひと…じゃなくて、俺だけ……」
「……約束するよ」
柔い唇で宥められ、再び落ちる瞼。何だか勿体ない気もするけれど、もう、限界だ。
今なら言えるかもしれない、と。散り散りになりそうな意識を掴んで音に代える。
「…あの、紙袋、も…いや、です……」
触れていた指の動きが止まって。何故だろうと考える間もなく眠りに落ちた。
「紙袋……、」
しばらく考え込んだ三井。やがて目を細めると、仕方がないとばかりに吐息を漏らして。
「…起きたら聞かせてもらおうかな、お姫様」
寝息を立てる愛しい人の額に口付けて、自らもまた眠りへ旅立った。
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